European Journal of Cancer論文を根拠とした製薬会社の公表 — Moleculin Biotech, 2023-03-09
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公表 SEC · 時価 Yahooは、米国証券取引委員会に提出した開示資料で、European Journal of Cancerに掲載された論文を主張の根拠として引用した。会社がその論文をどのように書いたか、および論文が実際に示した範囲を順に読み進めた。開示資料の後、1か月間の株価の動きが、過去の同様の事例と比較してどの程度かを記した。これは結果を知った後に書かれた事後的な判断である。論文は要旨までを読んだにとどまる。
公表は報道資料内で論文をこう書いた
米国上場企業が株主に知らせることがあると、証券取引委員会証券取引委員会 (U.S. Securities and Exchange Commission)
規制当局 · 公式サイトに提出する随時報告書を8-Kという。Moleculin Biotechが2023-03-09に提出したこの文書の項目番号は7.01 Reg FD公開・9.01財務諸表・添付文書だった。会社はそこに添付した報道資料でEuropean Journal of Cancerに掲載された論文を根拠に挙げた。論文を引用したその文を原文のまま転載すると以下の通りである。
The manuscript titled, “ Anthracycline-induced cardiotoxicity – are we about to clear this hurdle? 1 ,” was published in the peer-reviewed European Journal of Cancer . The published manuscript discusses clinically evaluated doxorubicin analogs that were developed as potentially non-cardiotoxic anticancer agents and includes Annamycin.
読者がまず見るべきなのは、企業がその論文をプレスリリースのどの部分に掲載したかである。次に、その論文が企業の主張全体を裏付けているのか、一部のみを裏付けているのかを区別する必要がある。後者の質問に答えるには、論文全文を読む必要がある。この記事は要旨までしか読まれていないため、それに答えることはできない。
論文の要旨で述べられた範囲はここまでである。
論文のタイトルはAnthracycline-induced cardiotoxicity — are we about to clear this hurdle?であり、European Journal of Cancerに2023-02-24に掲載された。著者の所属はLMU Klinikum・Ludwig-Maximilians-Universität München・The University of Texas MD Anderson Cancer Centerである。論文冒頭に掲載される要旨は要旨と呼ばれる。この記事が読んだのはそこまでである。機械が要旨を読んで書いた下書きを数字の照合でフィルタリングした後、人が再び書いた段落であり、全文を読んだ正確な判読とはランクが異なる。
この記事は実験論文ではなく、抗がん剤アントレサイトクリンが心臓を損傷させる問題を整理した総説である。この薬剤は多くのがんにおいて生存率を大幅に向上させたが、長期的な心臓毒性により患者3人中1人が命を落とす可能性があると記述されている。活性酸素とトポアイソメラーゼIIベータの阻害が主なメカニズムとして挙げられ、心臓薬の併用、鉄除去剤、心臓毒性が少ない新しい誘導体の開発が予防戦略として紹介されている。著者がレビューした新しい誘導体のうちどれが実際に優れているかは、総説の見解であり、比較試験結果ではない。
要旨が答えない情報は、本文と付録に残っている。そこまで到達していないこの記事は、空白を空白のままにする。企業が引用した箇所が要旨のどの文に該当するかは、上記の2つの引用を照らし合わせて読者が自ら判断する。
1か月後には、株価はサンプルの中段の半分以内にあった。
市場全体と同様に動く分を除いた残りの収益率を超過収益という。日付は株式市場が開いている日だけを数える取引日で記載する。カレンダーで言えば、20取引日は1か月前後である。この事例の開示当日とその後1か月の超過収益を下の表にまとめた。
| 期間 | 市場に対する超過収益 | 意味 |
|---|---|---|
| 公表の5営業日前 | +1.8% | 公表前にすでに動いた程度 |
| 公表当日 | −2.8% | 公表日または翌初日 |
| +1〜+5営業日累計 | −14.5% | 1週間 |
| +1〜+20営業日累計 | −18.2% | 1か月 |
同じタイプの過去事例を集めた束を標本という。その中で下から数えたときの位置を百分位で表記する。この事例の1か月超過収益−18.2%は、標本142件のうち下から30%にあたる半分以内である。
| 標本目盛(20営業日) | 下から10番目 | 下から4番目 | 中央値 | 上位25% | 上位10% | この事例 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 超過利益 | −31.9% | −20.1% | −6.9% | +5.5% | +19.5% | −18.2% |
サンプルの半分は表の中央の目盛りの間に入る。この事例がその中に含まれるか、外れるかを表から確認する。サンプルは、過去十数年間で米国上場企業が8-Kに論文を記載した事例を集めたものである。この企業自身はサンプルから除外した。ここに記載された数字は過去の事実であり、次の事例に適用するルールではない。
同じ企業が論文を8-Kに記載した事例がサンプルに1件さらにあり、下の表に一緒に掲載した。
| 開示日 | その論文の学術誌 | 1か月以上の超過利益 |
|---|---|---|
| 2020-06-16 | Nature | +0.7% |
公表後、企業はこのような文書を提出した
公表日以降に会社が提出した3件の8-Kについては項目番号のみを記載する。タイトルのない8-Kでは項目番号が内容の種類を示すためである。業績発表だったのか契約だったのかはその番号で判別できる。何が起きたかは各リンクの原文で読む。
- 2023-03-13 8-K 項目 7.01,9.01 — Reg FD公開・財務諸表・添付文書
- 2023-03-15 8-K 項目 7.01,9.01 — Reg FD 公開・財務諸表・添付書類
- 2023-03-22 8-K 項目 7.01,9.01 — Reg FD 公開・財務諸表・添付書類
この記事が答えられていないこと
論文の要旨だけを読んだこの記事では、その論文がどのような方法で何を再現し、どの程度まで示したかについて答えられていない。企業が引用した論文がその後どのくらい引用されたかは、OpenAlexOpenAlex
データ源 · 公式サイト の引用数で再確認できる。次に見るべきは、この企業の次の 8-K で同じ論文が再度引用されるかどうかである。
用語解説
- 8-K
- 米国上場企業が株主に知らせるべきことがある場合に、証券取引委員会(SEC)に提出する随時報告書。業績、契約、役員の変動などの項目番号で種類を示している。この記事のすべての出来事がこの文書から出ている。
- 超過収益
- 株価収益率(PER)から市場全体の収益率を引いた残り。市場全体が上下した分を除いて、この企業独自の動きを見るために用いる。
- 取引日
- 取引所が開いている日だけを数えた日数である。週末や休場日は除かれているため、20取引日は暦で1ヶ月前後となる。
- サンプルとパーセンタイル
- 同じタイプの過去事例を集めた束が標本であり、その中で下から何番目であるかを百分位で表記する。百分位が10であれば、10件のうち9件がこの事例よりよかったという意味である。
- アブストラクト
- 論文の冒頭に掲載される要約文である。著者が数文で、何をどのように行い、どのような結果を得たかを記述する。本文を読まなければ、方法の詳細や限界は把握できない。