Nature Communications論文を根拠とした製薬業界の公表 — Cartesian Therapeutics, 2022-02-16
Cartesian TherapeuticsCartesian TherapeuticsNASDAQ RNAC
公表 SEC · 時価 Googleが米国証券取引委員会に提出した開示資料で、Nature CommunicationsNature Communications
学術誌 · 公式サイトに掲載された論文を主張の根拠として引用した。会社がその論文をどのように書いたか、そして論文が実際に示した範囲を順に読み取った。開示資料の後、1か月間の株価の動きが過去の同様な事例と比較してどの程度かを記録した。これは結果を知った後に書かれた事後的な判断である。論文は要旨部分までを読んだ。
公表は報道資料内で論文をこう書いた
米国上場企業が株主に報告する必要がある事項がある場合、それを証券取引委員会(SEC証券取引委員会 (U.S. Securities and Exchange Commission)
規制当局 · 公式サイト)に提出する随時報告書を8-Kという。Cartesian Therapeuticsが2022-02-16に提出したこの文書の項目番号は7.01 Reg FD公開・9.01財務諸表・添付文書だった。会社はその添付資料に同封された報道資料でNature Communicationsに掲載された論文を根拠に挙げた。論文を引用したその文を原文のまま転載すると以下の通りである。
Tolerogenic nanoparticles mitigate the formation of anti-drug antibodies against pegylated uricase in patients with hyperuricemia.
読者がまず見るべきなのは、企業がその論文を報道資料のどの部分に掲載したかである。次に、その論文が企業の主張全体を裏付けているのか、あるいは一部のみを裏付けているのかを判別する必要がある。後者の質問に答えるには、論文全文を読む必要がある。この記事は要旨までしか読んでいないため、それに答えることはできない。
論文の要旨で述べられている範囲はここまでのものである。
論文のタイトルはTolerogenic nanoparticles mitigate the formation of anti-drug antibodies against pegylated uricase in patients with hyperuricemiaであり、Nature Communicationsに2022-01-12に掲載された。著者の所属はPAREXEL International (United States) · Selecta Biosciences (United States) · Altoona Center for Clinical Researchである。論文冒頭に掲載される要旨は要旨と呼ばれる。この記事が読んだのはそこまでである。機械が要旨を読んで作成した下書きを数字の照合でフィルタリングした後、人が再び書いた段落であり、全文を読んだ正確な判読とはランクが異なる。
生物学的製剤を使用すると、体が薬に対する抗体を作り、効果が低下する問題を防ぐためにラパマイシンをナノ粒子に封入したImmTORを試した二つの臨床試験の結果である。最初の試験では、尿酸を分解する酵素薬ペガドリケーゼ単独の安全性を確認し、二つ目の試験ではその薬にImmTORを加えて抗体生成を防ぐかどうかを確認した。二つの薬を一緒に使用した患者では、抗体が用量に応じて少なくなっており、酵素活性が維持され、血液中の尿酸が低下した。初期段階の小規模試験であるため、この方法が他の生物学的製剤にも適用できるかどうかはまだ示されていない。
要旨が答えない情報は、全文と付録に残っている。そこまで到達していないこの記事は、空白を空白のままにする。企業が引用した箇所が要旨のどの文に該当するかは、上記の二つの引用を照らし合わせて読者が自分で判断する。
1か月後には、株価はサンプルの下位四分位以内にあった。
市場全体と同様に動く分を除いた残りの収益率を超過収益という。日付は株式市場が開いている日だけを数える取引日で記載する。カレンダーでいうと、20取引日は1か月前後である。この事例の開示当日とその後1か月の超過収益を下の表にまとめた。
| 期間 | 市場対比超過収益 | 意味 |
|---|---|---|
| 公表の5営業日前 | −3.8% | 公表前の既存の動きの程度 |
| 公表当日 | −1.3% | 公表日または翌初日 |
| +1〜+5営業日分の累計 | −10.8% | 1週間 |
| +1〜+20営業日累計 | −27.0% | 1か月 |
同じタイプの過去事例を集めた束を標本という。その中で下から数えたときの位置を百分位で表記する。この事例の1か月超過収益−27.0%は、標本142件のうち下から18%にあたる下位四分の一内である。
| 標本目盛(20営業日) | 下から10番目 | 下から4番目 | 中央値 | 上位25% | 上位10% | この事例 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 超過利益 | −31.9% | −20.1% | −6.9% | +5.5% | +19.5% | −27.0% |
サンプルの半分は、表の中央の目盛りの間に入る。この事例がその中に含まれるか、外れるかを表から確認する。サンプルは、過去十数年間に米国上場企業が8-Kに論文を記載した事例を集めたものである。この企業自身はサンプルから除外した。ここに書かれた数字は過去の事実であり、次の事例に適用するルールではない。
同じ企業が論文を8-Kに記載した事例がサンプルにさらに2件あり、下の表に一緒に載せた。
| 開示日 | その論文の学術誌 | 1か月以上の超過利益 |
|---|---|---|
| 2022-04-06 | Scientific American | −34.6% |
| 2022-04-13 | Scientific American | −16.5% |
公表後、企業はこのような文書を提出した
公表日以降に企業が提出した3件の8-Kについては項目番号のみを記載する。タイトルのない8-Kでは項目番号が内容の種類を示すためである。業績発表だったのか契約だったのかはその番号で判別できる。何が起きたかは各リンクの原文で読む。
- 2022-03-10 8-K 項目 2.02,9.01 — 業績発表・財務諸表・添付文書
- 2022-03-22 8-K 項目 1.01,2.03,8.01,9.01 — 重要な契約の締結・債務の発生・その他の出来事・財務諸表・添付書類
- 2022-04-06 8-K 項目 8.01,9.01 — その他の出来事・財務諸表・添付書類
この記事が答えられていないこと
要旨だけを読んだこの記事では、論文がどのような方法で何を検証し、どの程度まで示したかについて答えられていない。企業が引用した論文がその後どのくらい引用されたかは、OpenAlexOpenAlex
データ源 · 公式サイトの引用数で再確認することができる。次に見るべきは、この企業の次の8-Kで同じ論文が再度引用されるかどうかである。
用語解説
- 8-K
- 米国上場企業が株主に知らせなければならないことがあると、証券取引委員会(SEC)に提出する随時報告書。業績、契約、役員の人事異動などの項目番号で種類を表している。この記事の出来事はすべてこの文書から出ている。
- 超過収益
- 株価収益率(PER)から市場全体の収益率を引いた残り。市場全体が上がったり下がったりする分を除いて、この企業だけの動きを見ようとするために用いる。
- 取引日
- 取引市場が開いている日だけを数えた日数である。週末や取引停止日は除かれているため、20取引日は暦日で1ヶ月前後となる。
- サンプルとパーセンタイル
- 同じタイプの過去事例を集めた束が標本であり、その中で下から何番目であるかを百分位で表記する。百分位が10であれば、10件のうち9件がこの事例よりよかったという意味である。
- アブストラクト
- 論文の冒頭に掲載される要約文である。著者が何をどのように行い、どのような結果を得たかを数文で記述する。本文を読まなければ方法の詳細や限界は把握できない。