Expert Opinion on Drug Discovery論文を根拠とした製薬会社の公表 — Immunic, 2021-07-12
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公表 SEC · 時価 Yahooが米国証券取引委員会に提出した開示資料で、Expert Opinion on Drug Discoveryに掲載された論文を主張の根拠として引用した。会社がその論文をどのように書いたか、そして論文が実際に示した範囲を順に読み進めた。開示資料の後、1か月間の株価の動きが過去の同様な事例と比較してどの程度かを記した。これは結果を知った後に書かれた事後的な判断である。論文は要旨部分までを読んだ。
公表は報道資料内で論文をこう書いた
米国上場企業が株主に報告する必要がある事項がある場合、それを証券取引委員会(SEC証券取引委員会 (U.S. Securities and Exchange Commission)
規制当局 · 公式サイト)に提出する随時報告書を8-Kという。Immunicが2021-07-12に提出したこの文書の項目番号は8.01 その他事件・9.01 財務諸表・添付文書だった。会社はそこに添付した報道資料でExpert Opinion on Drug Discoveryに掲載された論文を根拠に挙げた。論文を引用したその文を原文のまま転載すると以下の通りである。
Retinoic acid-related orphan receptor gamma t (RORγt) inverse agonists/antagonists for the treatment of inflammatory diseases – where are we presently?, Expert Opinion on Drug Discovery. https://doi.org/10.1080/17460441.2021.1948833. [3] Wang, J., Zou, J., Xue, X. et al.
読者がまず見るべきなのは、企業がその論文をプレスリリースのどの部分に掲載したかである。次に、その論文が企業の主張全体を裏付けているのか、あるいは一部のみを裏付けているのかを区別する必要がある。後者の質問に答えるには、論文全文を読む必要がある。この記事は要旨までしか読んでいないため、それに答えることはできない。
論文の要旨で述べられている範囲はここまでのものである。
論文のタイトルはRetinoic acid-related orphan receptor gamma t (RORγt) inverse agonists/antagonists for the treatment of inflammatory diseases – where are we presently?であり、Expert Opinion on Drug Discoveryに2021-06-30に掲載された。著者の所属はImmune Regulation (United Kingdom)である。論文冒頭に掲載される要約文は要旨と呼ばれる。この記事が読んだのはそこまでである。機械が要旨を読んで作成した下書きを数字の照合でフィルタリングした後、人が再び書いた段落であるため、全文を読んだ正式な判定とはランクが異なる。
この記事は実験論文ではなく、RORγtという転写因子を阻害する飲み薬と塗り薬の開発プロセスを16社の論文と特許で整理した総説である。この因子は炎症を引き起こすTH17細胞を調節する中心的な役割を果たすため、炎症性疾患の標的とされているが、臨床試験で多くの失敗が記録されている。塗り薬は効果が不十分であり、飲み薬は動物では胸腺リンパ腫、人では肝臓数値の上昇などの安全性の問題が生じたためである。異なる化学構造を持つ候補物質でこのリスクを回避できる可能性があるという著者の意見が続くが、それは実験結果ではなく見解である。
要旨が答えない情報は、本文と付録に残っている。そこまで到達していないこの記事は、空白を空白のままにする。企業が引用した箇所が要旨のどの文に該当するかは、上記の二つの引用を照らし合わせて読者が自ら判断する。
1か月後には、株価はサンプルの中段の半分以内にあった。
市場全体と同様に動く分を除いた残りの収益率を超過収益という。日付は株式市場が開いている日だけを数える取引日で記載する。カレンダーでいえば、20取引日は1か月前後である。この事例の公表当日とその後1か月の超過収益を下の表にまとめた。
| 期間 | 市場対比超過収益 | 意味 |
|---|---|---|
| 公表の5営業日前 | −1.5% | 公表前にすでに動いた程度 |
| 公表当日 | +2.3% | 公表日または翌初日 |
| +1〜+5営業日累計 | −20.5% | 1週間 |
| +1〜+20営業日累計 | −19.6% | 1か月 |
同じタイプの過去事例を集めた束をサンプルという。その中で下から数えたときの位置を百分位で表記する。この事例の1か月超過収益−19.6%は、サンプル142件のうち下から27%にあたる半分以内である。
| 標本目盛(20営業日) | 下から10番目 | 下から4番目 | 中央値 | 上位25% | 上位10% | この事例 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 超過利益 | −31.9% | −20.1% | −6.9% | +5.5% | +19.5% | −19.6% |
サンプルの半分は、表の中央の目盛りの間に入る。この事例がその中に含まれるか、外れるかを表から確認する。サンプルは、過去十数年間に米国上場企業が8-Kに論文を記載した事例を集めたものである。この企業自身はサンプルから除外した。ここに記載された数字は過去の事実であり、次の事例に適用するルールではない。
同じ企業が論文を8-Kに記載した事例がサンプルに1件さらにあり、下の表に一緒に掲載した。
| 開示日 | その論文の学術誌 | 1か月以上の超過利益 |
|---|---|---|
| 2020-04-22 | The Journal of Heart and Lung Transplantation | −22.0% |
公表後、企業はこのような文書を提出した
公表日以降に会社が提出した3件の8-Kについては項目番号のみを記載する。タイトルのない8-Kでは項目番号が内容の種類を示すためである。業績発表だったのか契約だったのかはその番号で判別できる。何が起きたかは各リンクの原文で読む。
- 2021-07-19 8-K 項目 1.01,9.01 — 重要な契約締結・財務諸表・添付文書
- 2021-08-06 8-K 項目 2.02,9.01 — 結果発表・財務諸表・添付書類
- 2021-10-15 8-K 項目 5.02,9.01 — 役員・取締役の変動・財務諸表・添付書類
この記事が答えられていないこと
要旨だけを読んだこの記事では、論文がどのような方法で何を再評価し、どの程度まで示したかについて答えられていない。企業が引用した論文がその後どのくらい引用されたかは、OpenAlexOpenAlex
データ源 · 公式サイトの引用数で再確認できる。次に見るべきは、この企業の次の8-Kで同じ論文が再度引用されるかどうかである。
用語解説
- 8-K
- 米国上場企業が株主に知らせなければならないことがあると、証券取引委員会(SEC)に提出する随時報告書。業績、契約、役員の人事異動などの項目番号で種類を表している。この記事のすべての出来事はこの文書から出ている。
- 超過収益
- 株価収益率(PER)から市場全体の収益率を引いた残り。市場全体が上がったり下がったりする分を除いて、この企業だけの動きを見るために用いる。
- 取引日
- 取引市場が開いている日だけを数えた日数である。週末や取引停止日は除かれているため、20取引日は暦日で1か月前後となる。
- サンプルとパーセンタイル
- 同じタイプの過去事例を集めた束がサンプルであり、その中で下から何番目であるかを百分位で表記する。百分位が10であれば、10件のうち9件がこの事例よりよかったという意味である。
- アブストラクト
- 論文の冒頭に掲載される要約文である。著者が何をどのように行い、どのような結果を得たかを数文で記述する。本文を読まなければ方法の詳細や限界は把握できない。