アメリカ腎臓病学会雑誌(Clinical Journal of the American Society of Nephrology)掲載論文を根拠とした医療検査会社の公表 — Natera, 2021-11-04
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公表 SEC · 時価 Yahooは米国証券取引委員会に提出した開示資料で、Clinical Journal of the American Society of Nephrologyに掲載された論文を主張の根拠として引用した。会社がその論文をどのように書いたか、そして論文が実際に示した範囲を順に読み取った。開示資料の後、1か月間の株価の動きが過去の同様の事例と比較してどの程度かを記した。その結果を知った後に書かれた事後的な判断である。論文は要旨部分までを読んだ。
公表は報道資料内で論文をこう書いた
米国上場企業が株主に報告する必要がある事項がある場合、それを証券取引委員会(SEC証券取引委員会 (U.S. Securities and Exchange Commission)
規制当局 · 公式サイト)に提出する随時報告書を8-Kという。Nateraが2021-11-04に提出したこの文書の項目番号は2.02 成績発表・9.01 財務諸表・添付文書だった。会社はその添付資料としてつけた報道資料で、Clinical Journal of the American Society of Nephrologyに掲載された論文を根拠に挙げた。論文を引用したその文を原文のまま転載すると以下の通りである。
Two can be better than one: Improving Non - invasive Diagnostics in Kidney Transplantation. CJASN 16: 1462 - 1463 , 2021; https://doi.org/10.2215/CJN.10630821 ”The limitations of the current study include the number of rejection samples and limited scope of the patient population .” - Akalin, et al.
読者がまず見るべきなのは、企業がその論文を報道資料のどの部分に掲載したかである。次に、その論文が企業の主張全体を裏付けるものであるか、あるいは一部のみを裏付けるものであるかを区別する必要がある。後者の質問に答えるには、論文全文を読む必要がある。この記事は要旨までしか読まれていないため、それに答えることはできない。
論文の要旨で述べられている範囲はここまでのものである。
論文のタイトルはTwo Can Be Better Than Oneであり、Clinical Journal of the American Society of Nephrologyに2021-10-01に掲載された。著者の所属はIcahn School of Medicine at Mount Sinaiである。論文冒頭に掲載される要約文は要旨と呼ばれる。この記事が読んだのはそこまでである。機械が要旨を読んで書いた下書きを数字の照合でフィルタリングした後、人が再び書いた段落であり、全文を読んだ正確な判定とはランクが異なる。
この記事は研究論文ではなく、腎臓学会誌のエッセイである。移植免疫抑制と移植後の管理が改善されたにもかかわらず、急性拒絶反応が依然として患者を苦しめ、移植腎の長期生存率を低下させている問題に言及している。過去20年間の研究が記録した拒絶反応の割合を挙げている。タイトルの意味は、一つの検査よりも二つの検査を併用したほうが良い可能性があるということである。新しい実験結果を含む記事ではなく、他の研究を評論した記事である。
要旨が答えない情報は、本文と付録に残っている。そこまで到達していないこの記事は、空白を空白のままにする。企業が引用した箇所が要旨のどの文に該当するかは、上記の二つの引用を照らし合わせて読者が自ら判断する。
1か月後には、株価はサンプルの中間の半分内にあった。
市場全体と同様に動く分を除いた残りの収益率を超過収益という。日付は株式市場が開いている日だけを数える取引日で記載する。カレンダーで言えば、20取引日は1か月前後である。この事例の公表当日とその後1か月の超過収益を下の表にまとめた。
| 期間 | 市場対比超過収益 | 意味 |
|---|---|---|
| 公表の5営業日前 | −5.8% | 公表前にすでに動いた程度 |
| 公表当日 | −0.8% | 公表日または翌初日 |
| +1〜+5営業日累計 | +1.7% | 1週間 |
| +1〜+20営業日累計 | −13.1% | 1か月 |
同じタイプの過去事例を集めた束を標本という。その中で下から数えたときの位置を百分位で表記する。この事例の1か月超過収益−13.1%は、標本142件のうち下から39%にあたる中段の半分以内である。
| 標本目盛(20営業日) | 下から10番目 | 下から4番目 | 中央値 | 上位25% | 上位10% | この事例 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 超過利益 | −31.9% | −20.1% | −6.9% | +5.5% | +19.5% | −13.1% |
サンプルの半分は、表の中央の目盛りの間に入る。この事例がその中に含まれるか、外れるかを表から確認する。サンプルは、過去十余年前から米国上場企業が8-Kに論文を記載した事例を集めたものである。この企業自身はサンプルから除外した。ここに書かれた数字は過去の事実であり、次の事例に適用するルールではない。
同じ企業が論文を8-Kに記載した事例がサンプルに4件さらにあり、下の表に一緒に載せた。
| 開示日 | その論文の学術誌 | 1か月以上の超過利益 |
|---|---|---|
| 2022-11-08 | Transplantation | −12.1% |
| 2023-02-28 | Journal of Genetic Counseling | +18.2% |
| 2024-08-08 | Journal of Clinical Oncology | +3.9% |
| 2025-11-06 | New England Journal of Medicine | +18.7% |
公表後、企業はこのような文書を提出した
公表日以降に企業が提出した3件の8-Kについては項目番号のみを記載する。タイトルのない8-Kでは項目番号が内容の種類を示すためである。業績発表だったのか契約だったのかはその番号で判別できる。何が起きたかは各リンクの原文で読む。
- 2022-04-15 8-K 項目 5.02 — 役員・取締役の変動
- 2022-05-05 8-K 項目 2.02, 9.01 — 結果発表・財務諸表・添付書類
- 2022-06-01 8-K 項目 5.07 — 株主総会の結果
この記事が答えられていないこと
要旨だけを読んだこの記事では、論文がどのような方法で何を再現し、どの程度まで示したのかに答えられていない。企業が引用した論文がその後どのくらい引用されたかは、OpenAlexOpenAlex
データ源 · 公式サイトの引用数で再確認できる。次に見るべきことは、この企業の次の8-Kで同じ論文が再度引用されるかどうかである。
用語解説
- 8-K
- 米国上場企業が株主に知らせなければならないことがあると、証券取引委員会(SEC)に提出する随時報告書。業績、契約、役員の人事異動などの項目番号で種類を表している。この記事のすべての出来事はこの文書から出ている。
- 超過収益
- 株価収益率(PER)から市場全体の収益率を引いた残り。市場全体が上下した分を除いて、この企業独自の動きを見るために用いる。
- 取引日
- 取引市場が開いている日だけを数えた日数である。週末や取引停止日は除かれているため、20取引日は暦日で1か月前後となる。
- サンプルとパーセンタイル
- 同じタイプの過去事例を集めた束が標本であり、その中で下から何番目であるかを百分位で表記する。百分位が10であれば、10件のうち9件がこの事例よりよかったことを意味する。
- アブストラクト
- 論文の冒頭に掲載される要約文である。著者が何をどのように行い、どのような結果を得たかを数文で記述する。本文を読まなければ方法の詳細や限界は把握できない。