American Journal of Transplantation論文を根拠とした製薬会社の公表 — Tonix Pharmaceuticals, 2023-04-17
Tonix PharmaceuticalsTonix PharmaceuticalsNASDAQ TNXP
公表 SEC · 時価 Yahooは、米国証券取引委員会に提出した開示資料で、American Journal of Transplantationに掲載された論文を主張の根拠として引用した。会社がその論文をどのように書いたか、そして論文が実際に示した範囲を順に読み取った。開示資料の後、1か月間の株価の動きが、過去の同様の事例と比較してどの程度かを記した。これは結果を知った後に書かれた後見的判断である。論文は要旨部分までを読んだ。
公表は報道資料内で論文をこう書いた
米国上場企業が株主に知らせることがあると、証券取引委員会証券取引委員会 (U.S. Securities and Exchange Commission)
規制当局 · 公式サイトに提出する随時報告書を8-Kという。Tonix Pharmaceuticalsが2023-04-17に提出したこの文書の項目番号は7.01 Reg FD公開・8.01 その他の出来事・9.01 財務諸表・添付文書だった。会社はそこに添付した報道資料でAmerican Journal of Transplantationに掲載された論文を根拠に挙げた。論文を挙げたその文を原文のまま転載すると以下の通りである。
April 6, 2023. https://doi.org/10.1016/j.ajt.2023.03.025 Forward Looking Statements Certain statements in this press release are forward-looking within the meaning of the Private Securities Litigation Reform Act of 1995.
読者がまず見るべきなのは、企業がその論文をプレスリリースのどの部分に掲載したかである。次に、その論文が企業の主張全体を裏付けているのか、一部のみを裏付けているのかを区別する必要がある。後者の質問に答えるには、論文全文を読む必要がある。この記事は要旨までしか読んでいないため、それに答えることはできない。
論文の要旨で述べられた範囲はここまでのものである。
論文のタイトルはTNX-1500, a crystallizable fragment–modified anti-CD154 antibody, prolongs nonhuman primate cardiac allograft survivalであり、American Journal of Transplantationに2023-04-06に掲載された。著者の所属は札幌医科大学・マサチューセッツ総合病院・札幌医科大学病院・礼文けいじんかい病院である。論文冒頭に掲載される要旨は要旨と呼ばれる。この記事が読んだのはそこまでである。機械が要旨を読んで作成した下書きを数字の照合でフィルタリングした後、人が再び書いた段落であり、全文を読んだ正確な判読とはランクが異なる。
人ではなくサルに他のサルの心臓を移植した後、免疫反応を防ぐ抗体TNX-1500を6か月間投与した実験である。標準用量を単独で投与された群では移植された心臓が265日以上生存し、低用量群では99日、低用量に免疫抑制剤を追加した群では88日であった。標準用量は寄生者を狙った抗体の生成を防ぎ、慢性拒絶反応も抑制した。血栓合併症は観察されなかった。動物実験であるため、人において同じ結果が出るかどうかはこの論文の範囲外である。
要旨が答えないことは、本文と付録に残っている。そこまで到達していないこの記事は、空白を空白のままにする。企業が引用した箇所が要旨のどの文に該当するかは、上記の2つの引用を照らし合わせて読者が自ら判断する。
1か月後には、株価はサンプルの下位四分位以内にあった。
市場全体と同様に動く分を除いた残りの収益率を超過収益という。日付は株式市場が開いている日だけを数える取引日で記載する。カレンダーでいうと、20取引日は1か月前後である。この事例の開示当日とその後1か月の超過収益を下の表にまとめた。
| 期間 | 市場対比超過収益 | 意味 |
|---|---|---|
| 公表の5営業日前 | −15.5% | 公表前にすでに動いた程度 |
| 公表当日 | −1.6% | 公表日または翌初日 |
| +1〜+5営業日累計 | −8.4% | 1週間 |
| +1〜+20営業日累計 | −41.4% | 1か月 |
同じタイプの過去事例を集めた束を標本という。その中で下から数えたときの位置を百分位で表記する。この事例の1か月超過収益−41.4%は、標本142件のうち下から6%にあたる下位四分の一内である。
| 標本目盛(20営業日) | 下から10番目 | 下から4番目 | 中央値 | 上位25% | 上位10% | この事例 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 超過利益 | −31.8% | −20.1% | −6.9% | +5.5% | +19.5% | −41.4% |
サンプルの半分は、表の中央の目盛りの間に入る。この事例がその範囲内に入るか外れるかを表から確認する。サンプルは、過去十数年間に米国上場企業が8-Kに論文を記載した事例を集めたものである。この企業自身はサンプルから除外した。ここに書かれた数字は過去の事実であり、次の事例に適用するルールではない。
同じ企業が論文を8-Kに記載した事例がサンプルに23件さらにあり、下の表に一緒に載せた。
| 開示日 | その論文の学術誌 | 1か月以上の超過利益 |
|---|---|---|
| 2018-01-22 | PLoS ONE | −15.3% |
| 2020-12-04 | Genome biology | +20.9% |
| 2020-12-23 | Genome biology | +32.1% |
| 2021-11-23 | JCI Insight | −11.5% |
| 2021-12-14 | JCI Insight | −23.9% |
| 2022-01-04 | JCI Insight | −38.1% |
| 2022-01-11 | JCI Insight | −31.8% |
| 2022-03-14 | Nature Structural & Molecular Biology | −9.3% |
公表後、会社はそのような文書を提出した
公表日以降に会社が提出した3件の8-Kについては項目番号のみを記載する。タイトルのない8-Kでは項目番号が内容の種類を示すためである。業績発表だったのか契約だったのかはその番号で判別できる。何が起きたかは各リンクの原文で読む。
- 2023-04-19 8-K 項目 7.01,8.01,9.01 — Reg FD公開・その他の出来事・財務諸表・添付文書
- 2023-05-01 8-K 項目 7.01,9.01 — Reg FD 公開・財務諸表・添付書類
- 2023-05-04 8-K 項目 7.01,8.01,9.01 — Reg FD 公開・その他の出来事・財務諸表・添付書類
この記事が答えられていないこと
論文の要旨だけを読んだこの記事では、その論文がどのような方法で何を検証し、どの程度まで示したかについて答えられていない。企業が引用した論文がその後どれだけ引用されたかは、OpenAlexOpenAlex
データ源 · 公式サイト の引用数で再確認できる。次に見るべきは、この企業の次の 8-K で同じ論文が再び引用されるかどうかである。
用語解説
- 8-K
- 米国上場企業が株主に知らせなければならないことがあると、証券取引委員会(SEC)に提出する随時報告書。業績、契約、役員の人事異動などの項目番号で種類を示している。この記事のすべての出来事はこの文書から出ている。
- 超過収益
- 株価収益率(PER)から市場全体の収益率を引いた残り。市場全体が上がったり下がったりする分を除いて、この企業だけの動きを見るために使う。
- 取引日
- 取引市場が開いている日だけを数えた日数である。週末や休場日は除かれているため、20取引日は暦日で1ヶ月前後となる。
- サンプルとパーセンタイル
- 同じタイプの過去事例を集めた束が標本であり、その中で下から何番目であるかを百分位で表記する。百分位が10であれば、10件のうち9件がこの事例よりよかったという意味である。
- アブストラクト
- 論文の冒頭に掲載される要約文である。著者が数文で、何をどのように行い、どのような結果を得たかを記述する。本文を読まなければ方法の詳細や限界は把握できない。